翻訳という作業の基本事項
翻訳という概念はどのようなものなのか? 翻訳にまつわる言葉の定義をあれこれと比べて見ながら、探っていきましょう。
2つ以上の言語の間で、対応する語句を探し出していく過程で、しばしば課題となるのは、異なる言語同士では、単語と単語が一対一での対応をしているとは限らないため、明確な対応をしていないときにどのような措置をとるか、ということがあげられます。例えば、ある言語では1つの単語で表記されている概念が、異なる言語では2つ以上の言語や2つ以上の概念をつなげないと表現できない、ということがあります。特に、文芸作品などの翻訳においては、作風の中で重要な役割を持つような語感やニュアンスを、どのようにして他の言語で表現させるかが、頻繁に問題として持ち上がっています。
ある言語から、違う言語への翻訳がそのままではできないことも、翻訳の現場では珍しくありません。直接の翻訳ができないのであれば間接的な翻訳をすることで対策とすることもよくあるようです。つまり、いったん第三の言語に翻訳して、その第三の言語から目的の言語に翻訳する、といった方法です。例を探してみますと、中東では幅広く浸透しているアラビア語がありますが、日本にはアラビア語を解する人がめったに見つからないのです。そこで、アラビア語の原書を英訳したものを探し出して、その英語版を、英文の邦訳をすることができる翻訳家に依頼して、日本語版の作成を達成する、といった方法が、現実によく採用されています。
第三の言語を仲介して翻訳する方法を使えば、翻訳できる言語の幅が一気に拡がります。しかし、第三の言語を仲介することは、それによって表現されている内容からかけ離れていく危険性を含んでいるものです。アラビア語→英語→日本語、として翻訳された場合であれば、アラビア語には存在しても英語には存在しない語句や概念が、置き換えられ方によって損なわれている恐れがあり、そこから日本語に翻訳されるにあたっては、もっと異なる語句や概念になっていく危険性も考えられるのです。
